【書評】精神科における予診・初診・初期治療

精神科における予診・初診・初期治療

精神科における予診・初診・初期治療

  • 作者:笠原 嘉
  • 発売日: 2007/02/01
  • メディア: 単行本

【期間】
2021/4/2-2021/4/3

【動機】
 本屋でも何度か見かけておりサラッと読み切れそうな分量というのは元々知っていた。定番書らしいということを知り、通勤の運転中に読み上げで聞こうとkindle版を購入した(が、読み上げ非対応だったため普通に読んだ)。

【内容】
 タイトルの通り精神科外来における予診・初診・初期治療について、それぞれで留意しておくことについて述べている。文体は柔らかく、サラッと読み切れる。

【感想】
 定番書だけあって金言が盛沢山だった。
 予診については、そもそも3つの側面があるという話から始まる。学生・初期研修で精神科をローテートした際には軽い説明はあるもののよくわからないまま予診の当番が回ってきて、通常の身体科での予診とやや毛色が異なる気がするけどナニコレ?と戸惑いながら、病歴を聞いたのちにテンプレートを埋めた。予診者が精神科志望の場合には自信が初診者のごとく話を聴取して診断まで考えていたこともあったし、自分もそうしていた。それは予診が「外来の練習のため大学病院でのみ用意された場」だと考えていたからだが、実際には予診は精神科において普遍的に存在し重要な役割のあるものだった。かなり時間をかけて予診をしてしまっていた自身の経験が苦く感じる。初診は3つの側面をもった役割のあるものであり、また「『全体のゲシュタルトをえがく』ことこそ予診の仕事である」ということは踏まえて予診に臨むべきだっただろう。後期研修中も予診を担当することは多いと想定されるため留意したい。
 初診・初期治療のパートでは、初診に限らず外来・入院患者さんとの日常診療などにも大切な一般的にあるべき姿勢について述べられている。精神医学的猥雑性の話と、家人や職場の人など本人に近しい人に対する姿勢の話はとても大切な話をしていた。
 また対人関係での修羅場について、その経験こそが精神科医アイデンティティであるという旨の記載はとても心に響いた。現在Twitterでは、摂食障害で入院した際の精神医療の残酷さを語った東洋経済の記事が一部で話題になっているが、それに対して下記のコメントがあった。


対人関係での修羅場・治療同盟の失敗は、今後何度も経験し苦しむのだろうと思うが、それも大切にしたい。願わくば上のような考えが自然に浮かぶような精神科医になりたい。